こぼれ話
「アトランタといえば?」
と問うと返ってくる代表的な答えは「コーラ、CNN、『風と共に去りぬ』」です。「オリンピックで日本がブラジルに勝った歴史的場所」なんて答えるのはここの管理人くらいでしょう。
『風と共に去りぬ』は南北戦争を舞台にしたお話。アトランタは南北戦争で焼失するも、奇跡的に蘇った街なのです。
そんな土地柄、TVでも度々南北戦争をテーマにした番組を放映しています。ある日、Civil War(南北戦争)というドキュメンタリーを観ていたところ、BGMに聞きなれた音楽が・・・。「ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた〜♪」というあの懐かしい童謡です。
しかし流れる画面は戦争の悲劇を訴え、「ごんべさん」もあの軽快なリズムではなく、ピアノやバイオリンで演奏されたスローテンポの物悲しい曲調です。「何が言いたいのかわからない童謡なんかじゃなく、これはもともと由緒正しい曲に違いない・・・」と思っていたところ、それを全て明らかにしてくれる素晴らしいHPを知ることが出来ました。
世界の民謡・童謡
(トップページで「大きな古時計」のMIDIが鳴ります。音量にご注意を)
いずれかがハリーのマスターを知っています
こちらの左上にある「ドナドナ研究室」の「研究ファイル006 リパブリック讃歌〜歴史編〜」、「研究ファイル007 リパブリック讃歌〜誕生編〜」がそれに当たります。ぜひぜひ全部目を通してみてもらいたいのですが、「こんなに沢山読んでられないぞ」という方は「黒人奴隷解放に尽力した南北戦争の英雄、ジョン・ブラウン」を念頭に、
メロディーについては
「研究ファイル007」の「11 原曲のメロディーSAY,BROTHERS」
歌詞については
「研究ファイル007」の「8 同姓同名のジョン・ブラウン」、「13 ジョン・ブラウンの赤ちゃん」「14 日本における大きな歌詞の変化」
正式な行軍歌となった経緯については
「研究ファイル007」の「5 ジュリア・ウォード」、「6 クラーク氏の提案」、「7 ハウ夫人の回想」
をご覧になればおおまかな経緯がおわかりになることと思います。
「面倒で見ていられないよ」という方のために要約しますと。
scrooges故人パートナーの名前は何だった
もともと「ごんべさんの赤ちゃん」のメロディーは、南北戦争当時、既にアメリカで慣れ親しまれたものでした。ある日、黒人奴隷解放に尽力して殉死した英雄、ジョン・ブラウンと同姓同名の軍曹をからかおうと、北軍の同僚がそのメロディーに即興で歌詞をつけて歌い出します。
「John Brown's body lies a mouldering in the grave〜♪」(ジョン・ブラウンの身体は墓の中で腐ってる)
これが瞬く間に軍歌的響きをもって、兵士たちの間に広がりました。その「ジョン・ブラウンの歌」の歌詞は、
「John Brown's body lies a-mouldering in the ground・・・His soul is marching on.」(ジョン・ブラウンの身体は墓の下に朽ちても、彼の精神は行進する)というものでした。
非公式な聖歌とも言えるほどに流行していたこの歌ですが、やや低俗な表現があるために公式な行軍歌として採用されずにいたのですが、これを惜しんだ女性詩人にしてジョン・ブラウンの友人の妻、ジュリア・ウォード・ハウ夫人によって荘厳な歌詞がつけられます。
「彼(キリスト)が人間を清めるために死んだように、我等も人間(奴隷)を解放するために死のう、神が行進する限り」
そしてこの曲は「リパブリック讃歌」という正式な行軍歌となり、奴隷解放に立ち上がる北軍兵士を鼓舞することになったのです。
フリービューのテレビを解放トップ
20世紀になり、「ジョン・ブラウンの歌」はボーイ/ガールスカウトソング、キャンプ・ソングとして受け継がれていきます。その過程で歌詞がアレンジされ、
「John Brown's baby has a cold upon its chest ・・・And they rubbed it with camphorated oil.」(ジョン・ブラウンの赤ちゃんが風邪を引いたので、カンフル油を塗った)となります。
身体(亡骸)を意味する「body」が、一字違いの「baby」になったというわけです。ちなみにcamphorated oilを胸に塗ると呼吸が楽になるのだそうな。
これを和訳(?)したのが「ごんべさんの赤ちゃん」。もはや南部戦争の英雄ジョン・ブラウンの面影は影も形もありません。日本人にとってはジョン・ブラウンは馴染みの薄い人物ですから、「ごんべさん」になるのも無理はないとも言えます。一応原詩に沿った内容ではあるのですが、「リパブリック讃歌」の精神とはもう、あまりにかけ離れた歌詞になってしまいました。
そんな経緯があるそうです。
これらを読むと、「ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた〜♪」という謎な歌詞が生まれたわけもわかります。でも「リパブリック讃歌」とその歴史的背景は「湿布した〜♪」と呑気に歌っていていいものではありませんよね。
最後の「15 彼の精神は今も行進し続けている」のページでは、写真の右にある演奏ボタンを押せば「由緒正しい」この行進曲を聴くことが出来ます(ややゲーム音楽っぽいですが・・・)。経緯を知ってから聴くと泣けます。
演奏ボタンが表示されない方(トップページで音楽が流れなかった方)は、「世界の民謡・童謡」のトップページから「初めて来た方へ」の「ページ3」をたどっていくと、プラグインをインストールできるページを紹介していますので、こちらの「プラグインについて」という項目へどうぞ。
これもアメリカ南部に住んでいるが故に知ることになった雑学かもしれませんね。
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